作品
自分の力ではどうにもならない事が、心底気に入らなかった。
「しょうがない」とばかり言って済まされてしまうことが、いかにつまらないかわかるか。
どうにもならない事ばかりが多すぎるから、俺はロックンロールに逃げる、音楽に逃げる、作品に逃げる。
全てから逃げるために、美しい作品を漁る。
そうでもしなければ生きていける気がしない。
美しい作品だけをずっと聴いていたい。
俺はずっと音楽の為に生きている。
作品を聴く、ライブに行く、そうして何とか空いた穴を埋めた気になって生きている。
月明かりを浴びて聴くジムノペディの月光の素晴らしさを、わかる人間は数少ないだろう。
孤独で音楽を漁るからこそ、人間は救われるのだ。
斜陽と湿った道路の下校途中、まとわりつく暑さで夏を実感する。急ぎ足の帰り道が、やけに長く感じる夕暮れだった。