某日、春の訪れ
今日は自動車学校の卒業検定に落ちた。
いつもは何事もなく出来ていた事が出来なかった。 自分の技量の無さを恨んだ。
何度後悔しても時間は戻らないし、やり直
すことは出来ない。あるのはただ卒検を落ちたという事実だけ。
俺は今黒染めの待ち時間でこの文を書いている。 頭にラップを貼られ、惨めな姿が鏡に写っている。
いつまでもこの失敗を引きずってはいられない。 切り替えてまた月曜日に向かっていかなければならない。
男は街を歩いていた、死にかけの目をして。 目的地など無く、ただぼーっとしながら歩き続けている。
考え事に夢中で、前から来た歩行者とぶつかった。
「すいません、」
か細い声でそう言うと、また歩き出す。
駅前は土曜日にも関わらず閑散として閑古鳥が鳴くようだ。
人が数人程しかいない。シラけた空気が春を飲み込んでいた。
駅前のベンチに腰掛ける、空が青い、陽の光が照らしている。
「春には魔が潜んでいる」、誰かが言っていた。
空はまだ青いままだ。